この記事は、2018年4月に私が皮革産業連合会の会報で寄稿した記事となります。
コンテンツマーケティングという考え方
インターネットを活用して販促活動をされている方の中には、「デジタルマーケティング」という言葉を一度は聞いたことはあると思います。
デジタルマーケティングは、自社のWEBサイトを軸に考えるWEBマーケティングよりもかなり広い概念として用いられ、自社のWEBサイト、電子メール、スマートフォンのアプリなど、様々なチャネルや手法を用いて、消費者との接点を最大化するマーケティング手法として注目を集めています。
消費者は、パソコン、スマートフォン、タブレットなどあらゆる端末から、インターネットを閲覧したり、電子メール、アプリ、SNSなどから情報を得ることができる時代になりました。そのような時代において、企業は多種多様なマーケティングツールを同時に活用したプロモーションが当たり前になり、それらをリアルタイムに連携させることも重要であると考えられています。
消費者は、企業から発信される情報だけではなく、様々なWEBメディアやクチコミ、家族や友人だけではない別の消費者の感想なども瞬時に伝達されるようになりました。
「情報=コンテンツ」を起点とした情報発信として2015年頃に注目されていたのが、「コンテンツマーケティング」という考え方です。
デジタル時代のコンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングの特徴については以下の通りです。
- 企業が発信したい情報を発信する
- 消費者が知りたい情報を発信する
- (1)と(2)のギャップを埋めるために、消費者にとって価値あるコンテンツを提供する
- 積み上げ式にWebサイトのアクセス数が増加する「資産型」の集客モデルが構築できる
広告主である企業側からの一方的な広告メッセージ(プレスリリースや従来のインターネット広告など)は、消費者には届きにくい時代になりつつあります。スマートフォンの普及により、いつでもどこでもYahoo!やGoogle、SNSなどのメディアから検索して知りたいことについての情報を簡単に得られることから、従来の広告メッセージが消費者には届かないことが多くなってきています。
その最たる例がメールマガジンです。従来では、消費者のメールアドレスを獲得してメールマガジン一斉配信することで一定の成果に繋がりましたが、最近ではメールよりもLINEやSNS、チャットアプリなどの普及により、メールを連絡手段として利用する消費者も少なくなってきたことにより、従来よりも成果が得られなくなってきました。
消費者自らが能動的に情報収集することがいつでもできるデジタル時代の今現在においては、消費者にとって価値ある情報=コンテンツを作ることが消費者との接点を持つための重要なファクターの一つになっています。
コンテンツマーケティングを実践しているアパレル・ファッション関連企業
BEAMS
積極的にコンテンツ(情報)を発信しているBEAMS(株式会社ビームス)。
2016年から公式サイト(ブランドサイト)とECサイトを統合し、商品紹介を中心としたコンテンツマーケティングを実施。消費者の購買活動は、店舗でもECサイトでもどちらでも良いというスタンスで運営しています。
キャンペーンのお知らせやシーズンに合わせた特集記事だけでなく、BEAMSのスタッフがスタイリングを紹介したり、各店舗ごとのブログ、写真だけのブログ「フォトログ」、テーマごとに厳選したアイテムを紹介するなど、消費者のニーズを多面的に捉えたコンテンツ(情報)を提供しています。
SHIPS MAG
日本のセレクトショップの老舗であるSHIPS(株式会社シップス)。
人、ファッション、カルチャーなどの切り口からコンテンツを提供しているSHIPISのオウンドメディア「SHIPS MAG」。
スタイリストや文化人との対談など、あらゆるカルチャーを巻き込んで運営している自社メディアです。 ファッションと様々なカルチャーの垣根を無くしたうえで、SHIPSの世界観を表現しているウェブマガジンの代表格です。
土屋鞄製作所
https://www.tsuchiya-kaban.jp/
ECサイトやSNS活用の成功事例としても取り上げられることの多い土屋鞄製作所。
「革製品へのこだわり」を伝えるコンテンツが特に充実しており、自社のブランドアイデンティティを伝えるために、写真のクオリティの良さだけでなく世界観が統一されたコンテンツ作りが特徴的です。
ブログだけでなくライブラリーには、「ものづくり」へのこだわり、革製品のメンテナンスに関してのコンテンツを掲載しており、消費者が必要な情報を届けることに重視した内容となっています。
潜在顧客に「見つけてもらう」仕組みをつくる
コンテンツマーケティングを実践しているアパレル・ファッション関連企業は、ここ数年多くなってきました。
今回ご紹介した企業は、誰しもが知っている企業ではありますが、知名度がまだまだのブランドや企業のホームページでも実践することでアクセス数が増加させることが可能になります。
以下は当社がコンテンツマーケティングの運用支援をさせていただいた国内の革小物ブランド様のGoogle Analyticsの数値を抜粋したものとなります。
運用開始前は、ホームページへのアクセス数が6,481回でしたが、1ヶ月後には11,913回に増加。
4ヶ月後にはアクセス数が16,293回とコンテンツマーケティング導入前と比べて約2.5倍のアクセス数の増加に繋がりました。その間に当社とクライアント企業様とで行った施策は以下の通りです。
実施した施策
- 商品紹介ページの充実
- 革小物の魅力が伝えるための記事作成
- 革小物のお手入れ方法などのお役立ちコンテンツの作成
- SNSの運用
- 各記事に対しての内部SEO施策の実施
コンテンツマーケティングを実施することでアクセス数の推移の変化は顕著に現れ、やればやるほど集客効率が大きくなるマーケティングモデルであることは当社でも実証済みです。
これからのマーケティングに欠かせないGoogleが提唱しているWebマーケティング理論「ZMOT」とは
ここで一つ質問です。「ZMOT(Zero Moment of Truth)::ジーモット」という言葉をご存知でしょうか。
「ZMOT(Zero Moment of Truth)」は、2010年にGoogleが提唱した消費者の購買行動に関するマーケティング理論です。
スマートフォンやタブレット端末の普及によって、消費者は店で購買行動する以前に、あらかじめインターネットで情報を下調べしてから店に足を運ぶことが多くなっています。消費者に商品を購入してもらう以前の接触が重要性を増しています。
商品に対しての認知・興味関心をどのようにしてコントロールしていくかが、マーケティングプランの大きなポイントとなっており、デジタルマーケティングにおいて不可欠の考え方です。
ZMOTを勝ち抜くためのコンテンツSEOの重要性
いかに消費者が購買活動する前に情報を素早く的確に届けるかが、ZMOTでは重要となってきます。消費者が情報を得る手段としては、以下のようなことが挙げられます。
購買意思決定に作用しているプロセス
- 検索エンジンによる検索結果
- テレビ、ラジオなどのメディアからの情報
- 動画
- 企業の公式サイト
- 情報サイト
- インターネット広告
- 各種SNS
- 雑誌などの紙媒体
上記のプロセスの中でも重要なファクターになっているのが、「検索エンジンによる検索結果」です。
その理由としては、スマートフォンやタブレット普及したことにより、いつでもどこでもインターネットで検索することができるため、何か気になったことや調べものをする時に一昔よりも情報を素早く収集することができる時代になりました。
そのようなデジタル時代において、検索エンジンの検索結果に自社のコンテンツを表示させるために、コンテンツSEOの重要性が昨今では問われています。
コンテンツSEOとは、消費者が日々悩んでいることや興味・関心のある分野の情報をコンテンツとして発信することで、より多くの消費者との接点を作り、関係性を構築する仕組みです。
つまりは、消費者にとって有益なコンテンツを作り発信することで露出を増やし、自然リンクを獲得してホームページのアクセス数を積み上げていく取り組みです。
消費者(ユーザー)にとって有益なコンテンツは、SNSで拡散されたり、自分のブログやホームページで紹介したいということで自然リンクを獲得できます。
自然リンクを獲得することで、コンテンツページがSEOで上位表示できアクセス数を継続的に増やす仕組みを作ることができます。
コンテンツマーケティングの運用を行うことで、広告費をかけなくてもホームページのアクセス数を増やし続けることも可能になります。
情報過多の現代における差別化できるコンテンツを作ろう
ただやみくもにコンテンツを増やし続ければよいというわけではありません。情報を誰しもが収集しやすくなり情報過多の現代において、他社との差別化できるようなコンテンツを作り続けることは容易ではありません。
今回のコラムでコンテンツマーケティングを自社で実践してみようと思われた方に、実践する前に決めるべき10の事をご紹介します。
コンテンツマーケティングを始める前に決めるべき10の事
- Webサイトの目的を明確にする
- コンテンツを届けるターゲットが誰なのかを明確にする(ペルソナ)
- ブランドアイデンティティ(自社のブランドや企業イメージがどう思われたいか)を明確にする
- 更新頻度・コンテンツ作成におけるライティングルールを決める
- どのようなキーワードでアクセス数を増やしたいかを決める
- ターゲットユーザーに対して必要なコンテンツとは何かを考える
- SNSの運用担当者を決めて運用ルールを決める
- 効果検証するための成果指標を決める
- 運用方針を見直すための振り返りのタイミングを決める
- 継続的に続けるための目標設定
ここで一番大事になってくるのが、「10.継続的に続けるための目標設定」です。
「とりあえずホームページのアクセス数を増やすために」「今話題だからとりあえず運用してみる」ということで始めると結果的に継続できず、コンテンツマーケティングの成果が見える前に頓挫してしまうことが多々あります。
更新頻度は多いことに越したことはありませんが、良質なコンテンツを提供し続けることを意識したうえで、その更新頻度を決めることが大事です。そして目標設定(アクセス数、コンバージョン数など)を明確にして、段階的に達成していくための目標を決めてからスタートすることをおすすめします。